NTTのIOWN構想とは?次世代ネットワークと光電技術の革新を徹底解説

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光電融合技術イメージ

NTTが推進するIOWN(Innovative Optical and Wireless Network)は、光技術を中心とした革新的な次世代通信インフラ構想であり、高速大容量、低遅延、低消費電力を実現し、6G時代の基盤となることが期待されています。

目次

IOWN構想とは何か?

NTTが提唱する「IOWN(Innovative Optical and Wireless Network/アイオン)」構想は、従来の電子(エレクトロニクス)技術中心の通信インフラを、光(フォトニクス)技術と無線技術を融合させた新たな次世代ネットワーク基盤へと進化させる壮大なプロジェクトです。この構想は2019年5月に発表され、ICTインフラの限界を突破し、より豊かで多様な社会を実現することを目指しています。

NTT 次世代ネットワークIOWN構想の目的と背景

現代社会では、動画の高精細化やIoT、メタバースなどの普及により、通信データ量が爆発的に増加し、それに伴う消費電力やネットワーク遅延が大きな課題となっています。IOWN構想は、こうした課題を解決し、データドリブン社会のインフラを支えるために生まれました。世界中の通信業界やIT企業から注目を集めています。

IOWNの仕組みとコア技術

オールフォトニクス・ネットワーク(APN)

IOWNの中核となるのが「オールフォトニクス・ネットワーク」です。これは、ネットワークから端末、さらには半導体内部まで光技術(フォトニクス)でつなぐことで、従来の電子回路に比べて消費電力を大幅に削減し、圧倒的な大容量・低遅延通信を実現します。APNでは、電気処理を行わず光波長信号のまま処理して伝送することで、従来のネットワークと比較して大幅な性能向上が可能となります。NTTとKDDIは、このAPNのグローバル標準化に向けて基本合意書を締結し、世界中のパートナーとのオープン・イノベーションを通じて、Beyond 5G/6G時代の課題解決に向けた持続可能な大容量光ネットワークの実現を目指しています

光電技術の革新

IOWN構想では、電気信号を光信号に置き換える「光電融合技術」が重要な役割を果たします。NTTはこの分野の開発を加速させるため、2022年に「NTTイノベーティブデバイス」という新会社を設立し、光電融合デバイスの量産体制を強化しています。

デジタルツインコンピューティング(DTC)とコグニティブ・ファウンデーション(CF)

IOWNは、現実世界を仮想空間で再現する「デジタルツインコンピューティング」や、ICTリソースを自動最適化する「コグニティブ・ファウンデーション」といった先端技術も包含。これにより、社会全体のデジタル化を強力に後押しします。

デジタルツイン・コンピューティング(DTC)は、IOWNの重要な構成要素であり、現実世界の人やモノをサイバー空間上に高精度に再現し、さまざまなシミュレーションや予測を可能にする技術です。DTCは製造業、都市計画、医療など幅広い分野での応用が期待されています。例えば、製造業では生産ラインの最適化や予知保全に活用され、都市計画では「バーチャル・シンガポール」のように都市全体のデジタルツイン化によるインフラ整備の効率化が図られています。また、医療分野では患者の個別化された治療計画の立案や、新薬開発のシミュレーションにも応用が可能です。DTCの実現により、現実世界の課題解決や新たな価値創造が加速することが期待されています。

コグニティブ・ファウンデーション(CF)は、IOWN構想の主要技術分野の1つであり、ICTリソースの全体最適化と管理を担う重要な役割を果たします。CFは、クラウド、ネットワーク、エッジなど多様なICTリソースを一元的に管理し、自動化・自律化された運用を実現します。AIやブロックチェーン技術を活用し、データの高速・高精度な処理と分析を行い、必要な情報をネットワーク内に効率的に流通させます。さらに、CFは自己進化型ライフサイクルマネジメントを実現し、未来予測を用いた対策立案や実行、無線アクセスの最適化など、システム全体の継続的な改善を可能にします。これにより、IOWN構想は複雑化するICT環境に対応し、持続可能で効率的なインフラストラクチャの実現を目指しています。

光電融合技術

IOWN構想のキーテクノロジーが「光電融合技術」です。これは、従来の電気配線を消費電力の少ない光配線に置き換え、ネットワークやデータセンターの消費電力を劇的に削減するものです。NTTは「NTTイノベーティブデバイス」という新会社を設立し、光電融合デバイスの開発・量産体制を強化しています。

IOWN構想の実用化はいつ?

  • IOWN1.0(APNサービス) 2023年3月、NTT東日本・西日本が企業向けに初の商用サービスを開始。従来比約200分の1の低遅延、1.2倍の伝送容量を実現しています。
  • IOWN2.0以降 2025年には大阪・関西万博で次世代サービスの公開、2026年にはサーバ分野での商用化、2030年には本格的な社会実装を目指しています。

IOWN構想がもたらす社会的インパクト

電力効率100倍、伝送容量125倍

IOWNが実現すれば、通信インフラの電力効率は現状比で100倍、伝送容量は125倍、遅延は1/200にまで向上するとされています。これにより、遠隔医療や自動運転、スマートファクトリーなど、さまざまな分野で新たな価値創造が期待できます。

IOWN構想の活用例

  • 遠隔医療:超低遅延通信でリアルタイム手術支援
  • 自動運転:膨大なセンサーデータを瞬時に伝送
  • スマートシティ:都市全体のデータを効率的に管理・最適化

IOWN関連の新会社と海外展開

NTTは「NTTイノベーティブデバイス」を設立し、光電融合デバイスの開発・製造を推進しています。また、NTTはインテルやソニーなどとともに「IOWN Global Forum」を設立。IBMやMicrosoft、欧米・アジアの大手企業なそど世界150以上もの企業が参加し、国際的な技術標準化とビジネスエコシステムの構築を進めています。

iモードの失敗要因と反省点

NTTのIOWN構想は、過去のiモードの失敗を徹底的に分析し、戦略の根本的な転換を図っています。両者のアプローチの違いを明らかにしながら、具体的な戦略転換のポイントを解説します。

  1. ガラパゴス化した閉鎖的エコシステム iモードは日本独自のコンパクトHTMLや「iモードボタン」といった独自仕様に依存し、海外キャリアに高額なライセンス料(収益の50%)を要求。この「完成形を押し付ける」姿勢が、現地のニーズや既存インフラとの整合性を無視した結果、23ヵ国中17ヵ国でサービス撤退に追い込まれました。
  2. スマートフォン潮流への対応遅れ 2007年のiPhone登場後も「iモード対応端末」に固執し、2011年までスマートフォン市場参入を遅らせたことが致命傷に。当時のドコモ社長は「iPhoneはiモード非対応」を理由に導入を拒否、結果として顧客流出を招きました。
  3. 端末メーカーとの非協力的関係 海外展開時に「特別設計端末」の開発を強要したことでコスト増を発生させ、現地キャリアの参入意欲を削ぎました。例えば台湾ではiモード端末が通常機種より3ヶ月遅れて発売され、価格も1.5倍に。

IOWN構想の戦略転換

1. オープンイノベーションの徹底

iモードが「完成品の輸出」にこだわったのに対し、IOWNでは「IOWN Global Forum」を2020年に設立。インテル・ソニーを筆頭にIBM・マイクロソフト・トヨタ自動車など150社超が参加し、技術標準の共同策定を推進しています。特に自動車業界からは「光ファイバーによる車載配線の軽量化」といった独自ユースケースが提案されるなど、業界横断的な開発が特徴です。

2. コア技術に特化した役割分担

iモードが端末からコンテンツまで垂直統合したのとは対照的に、NTTは光電融合技術という基盤技術の開発に集中。具体的には:

  • 光半導体の量産体制構築(NTTイノベーティブデバイス設立)
  • 量子暗号技術との融合(QKD/PQC技術の実証実験)
  • フォトニックディスアグリゲーテッドコンピューティング(モジュール間光接続技術)

これらの技術をオープンに提供し、応用開発はパートナー企業に委ねる「水平分業モデル」を採用しています。

3. 国際標準化の先行投資

iモードが事実上の「日本標準」に留まった反省から、IOWNでは早期にIEEEやITUでの標準化活動を展開。2023年には光ネットワーク遅延測定の国際規格「IEEE 2942」を取得し、2025年までに20以上の標準規格策定を目標としています。特に電力効率100倍、伝送容量125倍といった数値目標を国際基準に組み込むことで、事実上のグローバルスタンダード化を図っています。

4. 柔軟なビジネスモデル

iモードの「収益分配率91%」(コンテンツ提供者側)という硬直的なモデルを改め、IOWNではユースケースごとの収益モデルを許容。例えば・・・

  • 製造業向け:デジタルツイン活用の従量課金
  • 医療向け:超低遅延通信のサブスクリプション
  • 自動車向け:光配線技術のライセンス収入

この多様性が、味の素のような食品メーカーまで巻き込んだ異業種連携を可能にしています。

具体的事例に見る戦略の違い

▷ 海外展開手法 iモードが現地キャリアに高額ライセンスを要求したのに対し、IOWNではアジア・欧米の通信事業者と共同実証実験を推進。2024年にはドイツTelekomと光-無線統合ネットワークの試験を実施し、現地規制への適合性を確認しています。

▷ 端末戦略 「IOWN対応端末」の開発を強制せず、既存デバイスとの互換性を確保。2023年発表の「APNサービス」では、従来ルーターを光変換アダプターで接続するだけでIOWNネットワークを利用可能にしました。

この戦略転換の結果、IOWN Global Forumの参加企業数は3年で3倍に拡大、2030年の本格実用化に向けた生態系が急速に形成されつつあります。NTTがiモードの「失敗の遺伝子」を克服しつつあることが、IOWNの世界的注目度の高さに表れていると言えるでしょう。

IOWN参画企業の取り組み

IOWN構想には多くの国内外企業が参画しており、各社が独自の技術や知見を活かして取り組みを進めています。IOWNグローバルフォーラムには2024年時点で150社以上が参加しており、その半数以上が日本企業です。主要な参加企業とその取り組みは以下の通りです。

  1. NTT:IOWN構想の提唱者として、全体的な構想の推進と技術開発を主導しています
  2. インテル:IOWNグローバルフォーラムの設立メンバーの1つとして、半導体技術の面から貢献しています
  3. ソニーグループ:同じくIOWNグローバルフォーラムの設立メンバーとして参画し、エンターテインメント分野での応用を探っています
  4. エリクソン:通信インフラの観点からIOWN構想に参加しています
  5. NVIDIA:AI・GPU技術を活かし、IOWN構想の実現に向けて協力しています
  6. KDDI:NTTとともにオールフォトニクス・ネットワーク(APN)のグローバル標準化に向けて基本合意書を締結しました
  7. アクセンチュア:2021年7月にIOWN構想でNTTと業務提携を結び、デジタルツイン技術の開発などに取り組んでいます

これらの企業以外にも、日本電気(NEC)富士通日立製作所などの日本の大手IT企業や、多くの中小企業、研究機関が参画しています。参加企業は、それぞれの専門分野や技術を活かしてIOWN構想の実現に貢献しています。例えば、半導体メーカーは光電融合デバイスの開発に、通信機器メーカーは高速・大容量通信技術の開発に、ソフトウェア企業はデジタルツインやAI技術の応用に取り組んでいます。
ただし、IOWN構想の大胆さゆえに、参加企業の中にも温度差があることが指摘されています。ある参加企業の幹部は「100%賛同してNTTのIOWN構想に参加しているわけではない」と述べており、各社の取り組み姿勢には差があることがうかがえます。IOWN構想の成功には、これら多様な企業の協力と技術の融合が不可欠であり、今後もグローバルな協力体制の強化と技術開発の加速が期待されています。

IOWN実現への課題

IOWNの実現に向けては、技術的および社会的な課題が存在します。以下は、IOWNが直面する主な課題のリストです。

  • 消費電力の削減:IT機器の消費電力量の爆発的増加に対応するため、革新的な低消費電力技術の開発が必要
  • 大容量化と低遅延の実現:急増するデータトラフィックに対応するための技術革新が求められる
  • グローバル市場での主導権獲得:世界標準化に向けた取り組みと国際的な協力体制の構築が重要
  • 幅広い参加パートナーの確保:多様な産業分野からの協力と参画が必要
  • 技術の実用化:2030年の導入目標に向けた研究開発の加速と実証実験の推進
  • インフラ整備:特に米国など、光通信インフラが未整備の地域での展開
  • 法制度の見直し:新技術の導入に伴う規制や制度の適応

これらの課題に対処することで、IOWNは次世代の通信基盤として大きな可能性を秘めています。

まとめ:IOWN構想は未来社会のインフラ革命

NTTのIOWN構想は、光電技術を核に、通信インフラの限界を根本から打破し、電力効率100倍・超大容量・超低遅延の次世代ネットワークを実現する世界的プロジェクトです。2030年の本格実用化に向け、国内外の企業・団体と連携しながら、私たちの社会や生活を大きく変えるインフラ革命が進行中です。今後の実用化と社会実装に、ますます注目が集まっています。

情報源:

  1. https://www.rd.ntt/iown/0001.html
  2. https://group.ntt/jp/group/iown/whats.html
  3. https://www.rd.ntt/iown/
  4. https://www.nttdata.com/jp/ja/trends/data-insight/2025/0403/
光電融合技術イメージ

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