2025年7月、Twitter共同創業者でありBlock CEOのジャック・ドーシー氏が、新たな分散型メッセージアプリ「ビットチャット(Bitchat)」のベータ版を発表しました。Bitchatはインターネットやサーバー、ユーザーアカウントを必要とせず、Bluetoothネットワークのみで動作するという、これまでにないコンセプトのチャットアプリです。
目次
どんなことができるのか
- Bluetoothメッシュネットワークによる通信
各スマートフォンが30メートル圏内で自律的にネットワークを形成し、端末同士がリレー役となることで、通信範囲が端末から端末へと拡張されます。インターネット接続がない場所でもメッセージのやり取りが可能です。 - エンドツーエンド暗号化
X25519鍵交換とAES-GCMプロトコルを用いた暗号化により、通信内容の秘匿性が確保されています。 - 個人情報不要の匿名利用
電話番号やメールアドレス、恒久的なID登録が不要。ユーザーは完全な匿名で利用できます。 - パスワード付きルームやIRC風コマンド
グループチャット用のパスワード付きルームや、/join・/msgなどIRC風コマンドによる操作が可能です。 - ストア・アンド・フォワード方式
メッセージは端末内に一時保存され、オフライン状態のユーザーにも最大12時間(お気に入りは無期限)まで配信が遅延されます。
なぜBItchatを作ったのか?
ジャック・ドーシー氏は、中央集権的なSNSやメッセージアプリが抱える「検閲」「データ収集」「障害時の脆弱性」などの課題に強い問題意識を持ってきました。Bitchatは、
- 検閲や監視からの自由
- 災害やネット遮断時の通信手段確保
- 個人情報流出リスクの排除
といった目的で開発されています。
Bitchatは世の中をどう変えるのか?
Bitchatは、従来のインターネット依存型コミュニケーションを根本から変える可能性を秘めています。
- 災害・緊急時のライフライン
通信インフラが失われた災害現場や、ネット遮断下の抗議活動などで、端末同士の直接通信が命綱となり得ます。 - 検閲回避・プライバシー保護
サーバーを介さず、端末間のみでやり取りが完結するため、政府や企業による検閲・監視を回避できます。 - 新しい分散型コミュニケーションの実証
中央集権を排した設計思想は、今後のSNSやメッセージアプリのあり方に大きな影響を与える可能性があります。
今後の展望
現在はApple TestFlight経由でベータテストが行われており、今後はWi-Fi対応やバッテリー最適化、ネットワーク安定化が進められる予定です。画像送信や長文対応などの機能拡張も計画されています。
まとめ
Bitchatは「誰にも止められない」「誰にも覗かれない」通信を目指す、次世代の分散型メッセージアプリです。インターネットが使えない状況でも、ユーザー同士が直接つながることで、自由で安全なコミュニケーションの新しい形を提案しています。